【リバーサイド名球会】世界はたくさんの”好き”でできている
上演時間1時間の芝居を観に、東京から豊岡に行きました。
旗揚げ公演「旅と渓谷」にぶち抜かれて早2年。
第2回公演のお知らせには
第2回野外公演inスタジアム!
『リバーサイド名球会』
こうのとりスタジアム〈兵庫県豊岡市〉
と書いてあった。
「豊岡ってどこ!?!?!??!?!!??!!?」というのが正直な気持ちだった。
豊岡のみなさんすみません。
東京からだとどうやら6時間くらいはかかる。
けれど、野球場で野球の話やるだなんて、こんなの絶対おもしろいに決まってる。
そして現地で観たほうが楽しいに決まってる!
もし最初に「配信もあります」とか書いてあったとしても、私は迷わず豊岡に行こうと思っただろう。
心配なのは、台風で移動手段が絶たれたり公演中止になることくらいだった。
ちょうど大きな台風が三連休を直撃しそうという予報が出ており、自分がたどり着けないことやたどり着けても公演自体中止になるのではとハラハラしていた。
なんせ予報円ではとてもきれいに豊岡を横断していくルートだったので、きっと公演側も気が気ではなかっただろうと思う。
結果的には大きな天気の崩れはなく、無事に公演終了となった。本当によかった…!
新幹線で東京から京都へ向かい、特急きのさきへ乗り換えて豊岡へ。
駅前から直行の臨時バスに乗って、こうのとりスタジアムへ向かう。

車内ではスタッフさんが、丁寧に案内してくださった。
スタジアムへは坂を登っていくこと、上にはトイレがないのでバスを降りたところで済ませてから登ってほしいことなどなど。
5分ほどで到着しバスを降りると、赤いTシャツを着たスタッフさんたちが大勢動き回っている。
公演グッズ販売のテント横では学生ボランティアさんたちが飲み物を売っていた。
なんだかお祭りみたいだ。

坂を登ると、電子チケットの確認と座席に応じたリストバンドが配られた。
一体全体なにをどのようにすればいいのか検討もつかない客たちは、とりあえず指示に従ってスタジアム前の駐車場で待っている。
「野外でやる」「移動するらしい」は分かっても、このあと何が始まるかわからない。
開演10分前になると、整理番号順に呼ばれて球場正面の階段に並ばされる観客たち。
階段は7段ほどで、「白いテープが貼ってある段の好きなところに立ってください」とアナウンス。
さながら修学旅行の記念写真を撮る並びである。
スタッフさんがサクサク対応している中、私含め観客全員の頭上には「?」が沢山浮かんでいた。
目の前の道路には、一般の車が通っていくのが見える。
向こうから見たら何をしている集団に見えたのだろうか。
やっぱり集合写真を撮る人たちに見えたのかな。

だんだんと暮れていく空に合わせて、福原さんの前説が始まる。
3話構成であること、移動があるので協力してほしいこと、など。
芝居を観るというより何かのイベントが始まるような、不思議な感じ。
前説が終わると、左手側から役者さんらしき声が聞こえてきて、階段に並んでいる客の前に現れた。
なんとも形容し難いのだけど、一瞬でそこが「物語」になったのがなんだかとてもすてきだった。
1秒前までただの駐車場だったのに!
#スリーピルバーグス
— スリーピルバーグス第2回野外公演 in スタジアム!『リバーサイド名球会』 (@3pielbergs) 2024年9月25日
第2回野外公演 in スタジアム!
『 #リバーサイド名球会 』#豊岡演劇祭2024
2024.9.20-9.22
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第一話
「神鍋からの打者」
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Photo:igaki photo studio
Photo courtesy:Toyooka Theater Festival pic.twitter.com/dyvtgKv7Ue
週末は代打屋をやっている田上と、昔は野球をやっていたけど辞めたらしい楠木ふたりのカップルがわちゃわちゃと話し始める。
佐久間さんのきらきらした声と、平井さんのなんだかめんどくさそうな人間感が凸凹でとってもおもしろい組み合わせ。
かと思うと、客の真後ろであるスタジアムから「ちょっとごめんなさいね、道開けてね!」と、観客をかき分けて内山田が現れ、話はどんどんややこしく騒がしくなっていく。
八嶋さんの「おじさんのおばさん」感もとってもチャーミング。
観客を巻き込みながら、登場人物たちが会話していく小気味良さ。
周りの森からは虫の鳴き声、車の通る音、突然球場内から聞こえるアナウンス音。「テステス、教務主任の延岡です」。
始まってほんの数分で観客側に「こうやって観たらいいんだ」の雰囲気が広がっていく。
最後は演者自身が車を運転しながら芝居をしていて、大盛りあがりの中1話が終わった。
ぞろぞろと場内へと移動し、今度は芝生の上で2話が始まる。
目の前には実際の放送室が広がっている。
18時台より20時台の方があたりが暗くて、闇に浮かび上がる室内が印象的だった。
2話のメインは体育会系教師延岡と、不登校の高校生林くんのお話。
敬三さんのよく通る声と、久保さんの挙動不審で頭でっかちな喋り方に思わず笑う。
延岡が実際の放送用マイクに向かって「テステス、教務主任の延岡です」と喋り始める。
球場に大きくハウリングした声が響き渡った。
たったこれだけで、1話と時系列が同じことが分かるのも気持ちいい。
#スリーピルバーグス
— スリーピルバーグス第2回野外公演 in スタジアム!『リバーサイド名球会』 (@3pielbergs) 2024年9月28日
第2回野外公演 in スタジアム!
『 #リバーサイド名球会 』#豊岡演劇祭2024
2024.9.20-9.22
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第ニ話
「放送室より愛をこめて」
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Photo:igaki photo studio
Photo courtesy:Toyooka Theater Festival pic.twitter.com/g4ipObO53d
放送室から出てきた延岡が、逆光の中話し始める。
「僕の顔、見えてます? 真っ暗だよね? どなたかちょっと照らしていただけませんか」
突然の問いかけに、驚き笑う観客たち。
折角だしと照明役をやらせていただいた。とてもどきどきした。
渡された懐中電灯で、動き回る延岡の顔を照らす。
野球場を走り回る姿を光で追いかけ、言葉につられて少しどんよりした夜空を見上げ、一緒に星座を作る。
もう完全に、私達は物語の中だった。
3話目になり、一塁側、三塁側それぞれの席に分けられる。
1塁側では1塁の、3塁側では3塁のお話が始まる。
そういえばそうだった!観ている席によってお話が違うのだ。
一塁側では「須藤選手は八百長なんてしていなかった」という話を、
三塁側では「須藤の八百長疑惑のせいで巡り巡って選手になれなかった」話がはじまる。
向こう側が突然歌を歌い始めるのが聞こえたり、登場人物がこちらとあちらを行ったり来たり。
席の目の前で登場人物が喋っているけど、向こう側の話し声も聞こえる。
#スリーピルバーグス
— スリーピルバーグス第2回野外公演 in スタジアム!『リバーサイド名球会』 (@3pielbergs) 2024年10月1日
第2回野外公演 in スタジアム!
『 #リバーサイド名球会 』#豊岡演劇祭2024
2024.9.20-9.22
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第三話・一塁側
「嗚呼、我らの須藤大輔」
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Photo:igaki photo studio
Photo courtesy:Toyooka Theater Festival pic.twitter.com/0RW7HSCHgh
蒸し暑くまとわりつく空気、夜の匂い、虫の音が聞こえる場所で、芝居が進んでいく。
夜空には花火が上がり、須藤という選手が知らない野球チームとともにマウンド上がる。
チームが現れた瞬間、「実際の豊岡のチームの方なんだ」と気づいてとても気持ちが良くなった。
ああ、豊岡に来てよかったなぁ。
真っ暗な球場にパッと明かりが灯る。
試合開始のサイレンが響き渡った。
本物の草野球ゲームを、本当に実際の観客席で見て応援している私達。
お芝居を見ているのか、野球の応援に来たのか。
実際のところ私はあんまりちゃんと野球のルールを分かっていないんだけど、見ているだけで楽しい。
ヒットを打ったとき、アウトになったときで、お話が変わる。
「たった1回の物語」が目の前で繰り広げられる。
#スリーピルバーグス
— スリーピルバーグス第2回野外公演 in スタジアム!『リバーサイド名球会』 (@3pielbergs) 2024年10月3日
第2回野外公演 in スタジアム!
『 #リバーサイド名球会 』#豊岡演劇祭2024
2024.9.20-9.22
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第三話
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Photo:igaki photo studio
Photo courtesy:Toyooka Theater Festival pic.twitter.com/YhZLEmqAly
私の前に座っていた小学生くらいの男の子が思わず身を乗り出した。
顔は見えないけど、きっと目がキラキラしているんだろうなと分かる。
「今こそ応援を!」の声掛けで、1塁3塁がそれぞれ別の応援歌を歌い出す。
マウンドではいろんな人々が汗まみれ泥まみれ、ときには雨でぐちゃぐちゃになりながら野球をしている。
もちろん観客も雨でびしょ濡れだ。
もうなんでも良くなってきて、笑いが込み上げた。
「君は野球のどんなところが好き?」
須藤が語り出す。
登場人物たちは各々の「好きなところ」を話す。
かっこいい帽子に憧れたこと、応援の吹奏楽の音、グローブの匂い…。
後半を、豊岡草野球チームのみなさんが話すのがとても心地よい。
本当に様々な「好き」があって、そのどれもが、自分が体験したわけではないのに実感を伴って伝わってくる。
隣の人がうんうんと笑いながら頷くのが見えた。
これはあらゆる「好き」の話をしているんだ。
例えばそれは「お芝居」そのもののこと。
例えばそれは「絵を描くこと」。
野球じゃなくても、1度でも自分が「好きだ」と思った物事全てに当てはまる言葉だと思った。
試合が終わり、須藤が静かに去って行こうとする中一人の選手を指して言う。「彼はホームランという概念そのものだよ」。
そのセリフを聞いた瞬間、自分自身がワープしてしまったかのような衝撃を受けた。
それくらい、突然空気が変わった。
ここからのセリフは大きく飾りたいくらい大好きで、息を呑んでしまった。
公式サイトのあらすじには
「野球へのLOVEが、すべてのLOVEへとつながっていく60分の喜劇」
と書かれている。
最初読んだとき、一体何を言っているのか分からなかった。
でも、実際にこの物語を見てみると、どこまでもまっすぐに「あい」が溢れていて、本当にこの文章の通りだった。
ラストシーンに込められたもの全てがうつくしく、きれいで、胸が締め付けられて、知らない間に涙が溢れている。
10分くらいあったのか、5分くらいだったのか実際の経過時間がわからないけれど、永遠みたいな時間。
紡がれる言葉の一音一音が球場に響き渡って、そうして世界一周して私に届いたみたいだった。
前回公演の感想で、「福原さんの言葉は、向こうから歩いて来てくれるような、そっと出していた手に渡されるような、そんな不思議な感覚があります。」と書いたことがある。
今回はボールという形で飛んできて、私はそれをバスッと音を立ててキャッチした気分になった。
胸が一杯で、やっぱり涙が止まらなかった。
なんとか文字に残しておこうとしているけど、あのときのあの感情や感覚はなかなかうまく表現できない。
はじめは「もうちょっと近場でやってくれたらな」と思っていたけれど、豊岡まで行って本当に良かったし、この場所で観られたことが嬉しい。
ありとあらゆる「好き」の物語だった。
「人生」の物語だった。
「全て」の物語だった。
移動時間を含めたら1時間ないのがおかしいほどに濃密だった。
きっとまた私は、このうつくしい物語をずっと大事にしていくんだろうな。
#リバーサイド名球会 、無事に終幕いたしました!集って下さった皆さま、心とお力を寄せて下さった皆さまのお陰で、観たことのない景色が沢山立ち昇りました。本当にありがとうございました!時々でも想い出して貰えたら嬉しいです。
— スリーピルバーグス第2回野外公演 in スタジアム!『リバーサイド名球会』 (@3pielbergs) 2024年9月23日
野球へのLOVEがすべての LOVEへと繋がってゆく……
©ayakatomokane pic.twitter.com/CPwVFTIPI1